溝口健二 雨月物語
男の欲望の抑えきれなさやそれに被害を受ける女。
見ている側として、女と出会った後の世界観はすでに、
その幸福がつかの間であることがわかってしまう。
ぼんやりとした温泉の湯気、湖の映像の不確かさが幸福が現実ではないことを映し出す。
旅僧侶に会う。
「訳はない。命がなくなる。望んではならぬ恋を望んだ」
老婆は言う。
「男は一旦の過ちで済んでも女はすまぬ」
老婆の執拗な物言い。
欲にくらんで現実と欲望が映し出す世界との分け目がわからなくなる。
身分相応の欲をもとう。
最後に田中絹代が泣く。
女はすべてを知っている。
幻想だった。
それにしても男がだめすぎるな。
あなたが理想のお方になったとき、私はもうこの世にはいないのです。
確か二回目
昔より入り込んで見えた。
日本映画が見せる現実と虚構のあいまいさ。
それは、現世と常世の境界のあいまいさではないか。